CrossFeel Sound by Pioneer

オーディオ・ビジュアル評論家 潮 晴男×CrossFeel SPECIAL IMPRESSION

[第3回]簡単設置で快適空間を創造…変幻自在な照明で部屋が変身する。

PROFILE 潮 晴男
オーディオ・ビジュアル評論家・音響監督
オーディオ・ビジュアル専門誌をはじめ情報誌、音楽誌など幅広い執筆活動をおこなう一方、音響監督として劇場公開映画やCDソフトの制作・演出にも携わる。ハリウッドの映画関係者との親交も深く制作現場の情報にも詳しい。またイベントでの丁寧でわかりやすいトークとユーザーとのコミュニケーションを大切にする姿勢が多くのファンの支持を得ている。
  1. [第1回]照明と音の融合…シーリングライトから音が出る意外性
  2. [第2回]スマホで気軽に音楽やFM放送が楽しめるLED
  3. [第4回]クリアで透明力のある国分友里恵さんの歌声。

限りなく蛍光灯に近い点灯イメージ

潮 晴男

LEDシーリングライトは室内のイメージを大きく変えることのできる照明器具である。調光機を組み込めば他の照明方式でも簡単に明るさを調整することはできるが、そこにさらなる変化を求めようとするとそう単純ではない。CrossFeelの素晴らしさは、このボディの中に変幻自在な明かりを演出する機能が組み込まれていることだ。
さらにCrossFeelを取材してみて分かったこと、それはこのモデルの点灯イメージが出来るだけ蛍光灯に近づけられていることだった。使いなれた照明器具から交換しても違和感が出ないようにと、指向性の強いLEDの光を光学的な処理を施し、効率的に拡散させるなど、NECライティングの開発陣はきめの細かい配慮をおこなっている。だからグローブ(照明器具のカバー)を外さない限りLED照明だとは気がつかない。
昭和50年代まで、蛍光灯を使った照明器具に使われている蛍光ランプは東日本の50Hz圏では色温度が4,200度、西日本の60Hz圏では6,500度だった。周波数共用のインバータ方式の照明器具が発売されて以来、そうした蛍光ランプの色温度の違いはなくなったものの、西日本では色温度の高い青白い色の明りが好まれると言う傾向は残っていたらしい。しかしながら住環境の変化も手伝って、色温度の低い電球色に対するニーズも生まれてきたのである。
そうした市場の変化に、NECライティングでは10年以上も前から昼光色と電球色の蛍光ランプを使い、これらを選択点灯することで色温度を変化させると言う光の演出を提案してきた。しかしながらこの時点ではさらにきめの細かい光の世界を実現するまでには至っていない。※ 潮先生は読者に判りやすくと、あえて「度」を使っていますが、正しくは色温度の単位は「K(ケルビン)」で表します。
だからこそLED照明は、調光や調色が容易におこなえるその特性を活かし、光を演出する未踏の領域に踏み込める照明器具として大いなる期待を集めた。ところがLED光源は小型軽量、省エネ化をもたらすものの光の直進性が強く眩しい。したがってその特性を活かしつつ、照明器具として本来の役割を果たすためには、LED素子の取り付け方にもノウハウが求められるし、彼らがマルチアングルシステムと呼ぶ光を拡散するための独自のフィルターを開発する必要があった。
LEDシーリングライトにおいても、彼らの基本姿勢が光の質を高めるものであることに変わりはない。光の直進性に対しては乳白色のカバーを付けることで配光の幅を拡げているが、そうすると光の利用率は20〜30%低下する。それを補うためLEDの数を増やすと消費電力がアップし、出力の高い素子を使うと光のむらが出る。この辺りの設計は、まさにこれまでの技術蓄積がものを言う部分でもありNECライティングの開発陣の腕の見せどころだった。
CrossFeelはそのため、昼光色と電球色のチップを交互に並べ、さらにそれぞれに適正な角度が付けられている。実際のユニットを手にすると、あっけないほどシンプルだが、それゆえにこれが照明の元になると思うととても感動する。またグローブの薄型設計をおこなうと中央部分に充分な光量が行き渡らなくなるため、LED素子は薄型でもグローブにはある程度の厚みを持たせて混光が自然におこなえるよう工夫しなくてはならないのである。
またCrossFeelは、調光することで省エネ化が可能になるという利点を持つ。蛍光ランプでも調光すると消費電力は低下するが、その一方でロスも発生する。LEDライトにはそうした無駄が極めて少ないのだ。しかしながらLEDを使えば、総てがバラ色になるわけではない。安価なLEDは電源回路に起因するフリッカー性のノイズを発生しやすくチラつきの原因にもなるからだ。その点NECの照明器具は、厳格なNECの基準を元に厳選した半導体部品と独自に開発した電源回路を用いているため、そうした問題は発生しない。PSEやJISという国内の規格以上に厳しい基準を自らに課していることも高性能な製品を生み出す大きな支えになっている。

大きな可能性を秘めたCrossFeel

CrossFeelのサウンドについては、これまでオーディオ的な要素にだけ触れてきたが、実はこのLEDシーリングライトには、それ以外にも様々な仕掛けがなされている。最初は余計なお節介だなぁ、と思っていたが波の音や鳥のさえずりが潮 晴男光と調和することによって、意外な効果を生むことも分かった。なんと言うか、その音色が実に長閑なんですねぇ。リモコンでの調整には少しばかり慣れを要するが、専用アプリのコントロールデータをスマホにダウンロードすれば、もっと自由に操れる点も良い。部屋毎にCrossFeelを設置しても、使い方次第で全く別な照明器具に変身する点もこの製品の大きな特徴なのである。
いろいろな意味でCrossFeelには、大きな可能性が残されている。言い換えるなら夢がある。演出機能を司るCPUにイヤーズ・メモリーとしてクリスマスやお正月と言ったモードを用意しておけば、それだけで場の雰囲気が盛り上がることは間違いないし、さらに音が加わることで楽しさが倍増する。照明器具一つで部屋の中の景色が一変すると言ってもいいだろう。
ところで随分と間が空いてしまいましたが、前回登場した「皆生温泉」は皆さん読めましたか。正解は「かいけおんせん」。米子市という地名も今でこそいろいろとニュースネタになって「よなご」と読んでいただけるようになりましたが、さすがに「かいけおんせん」はまだ全国区になっていないので少し難しかったのではないでしょうか。この温泉に浸かるとみんな元気になりますので、ぜひお出かけください。という観光大使のPRはここまでにして、最後にCrossFeelのこれからについて、ぼくなりのリクエストをしておきたいと思う。
せっかく生まれたジャンルであることから、今後はBluetoothによる伝送だけでなく、5GHz帯のユニバンドを使ったYiSAと呼ぶ最新のデジタルワイヤレス伝送の採用も考えてほしい。そうすれば非圧縮の音声が受信できるし、映像とのシンクロも可能になる点で、テレビとの組み合わせも面白いと思う。最新のテレビは映像の再現力は向上しているものの、その一方でスピーカは隅に押しやられ、やっと鳴っているのが現状だ。そうしたジャンルにもCrossFeelは救いの手を差し伸べることができるのである。
照明器具は部屋の中心に設置できる数少ない家具だ。そうであるなら明かりを灯すだけでなく明かりの質、そして音を含めた環境について考えるべき時が来ているようにも思う。そうした意味でこのモデルは新しいジャンルを開拓することのできる唯一の存在として、これから先もこの世界をリードしてほしい。光と音についていろいろなことを考えさせてくれたCrossFeelにぼくは大いに期待している。

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  1. [第1回]照明と音の融合…シーリングライトから音が出る意外性
  2. [第2回]スマホで気軽に音楽やFM放送が楽しめるLED
  3. [第4回]クリアで透明力のある国分友里恵さんの歌声。

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